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ニューヨーク サービス業の本分を

2015年06月07日

 取引や相談のため銀行に電話しても、自動音声の質問ばかりが続いてオペレーターになかなかつながらず、いらいらした経験を持つ人も多いだろう。米国でも事情は同じ。先日、口座を開設した米銀の担当者に改善を求めたところ、秘密を打ち明けてくれた。「口座番号などを聞かれても、無視してゼロのボタンを押し続けてください。オペレーターにつながります」

 どの銀行も、電話やインターネットによる取引を「便利だ」とアピールする。しかし、人員を減らしてコスト削減につなげて利益を上げるのが、本当の狙いだ。電話の自動音声に従ってボタンを押したり、パソコン操作に不慣れなお年寄りたちにとっては手間のかかる作業で、逆に不便になる。私自身、ネット取引の操作手順が分からず、電話で問い合わせて、混乱に拍車が掛かったことがある。

 「コスト削減は避けられない流れだが、電話やネットの取引を面倒だと考える人への配慮も大切だ」とこの担当者。先に紹介した「抜け道」もそのひとつかもしれない。「銀行はサービス業」の精神に立ち返り、顧客目線の対応が求められるのは万国共通だ。 (東條仁史)