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韓国・鉄原 平和展望台の緊張感

2015年06月24日

 ソウルから北東へ100キロ余。北朝鮮との軍事境界線をはさんで南北に広がる非武装地帯(DMZ)近くの「鉄原(チョルウォン)平和展望台」を取材で訪ねた。日本の植民地時代には、現在のソウルと日本海側の北朝鮮・元山(ウォンサン)を結ぶ鉄道が通る交通の要衝だった。

 DMZも、その先に広がる北朝鮮側の鉄原平野も新緑がまぶしい。韓国側と北朝鮮側にポツン、ポツンとある軍の監視施設さえ見えなければ、のどかな風景だが、朝鮮戦争(1950~53年)当時は「鉄の三角地帯」と呼ばれる中部戦線最大の激戦地だったという。

 案内役の軍の担当者が、遠くに見える北朝鮮側の山の頂を指さして「金日成(キムイルソン)高地と呼ばれています」と説明した。北朝鮮の故金日成主席が戦争当時に山頂まで登り、自ら戦闘指揮したことが由来という。

 北朝鮮の遠景を撮影することは許されたが、手前にある韓国側の軍事関連施設の撮影は厳しく制限された。展望台からの帰り際、デジタルカメラをチェックした兵士から「この写真はダメです」と言われ、1枚だけ削除された。ソウルで普段、感じているのとはまた違った緊張感だった。 (中村清)