2015年06月28日
薄いピンク色の角張った2階建ての家屋。ガラスのない窓から中を見ると、大きな薄型テレビにクイズ番組が映っていた。
米国との国交回復に向けて動きだしたキューバ。社会主義体制下で窮していると聞いた国民生活を確かめようと首都ハバナの近郊を訪れた。
家主の男性は「庭師の仕事で月収は15ドル(約1900円)。みんなそんなものさ」。背後のテレビからは、明るい笑い声が聞こえる。
キューバでの薄型テレビの相場は1500ドル。日用品を国の配給制度に頼る庶民には手が届かない高級品だ。だが、DVDプレーヤーで米国映画を楽しむ世帯も珍しくない。
男性は「アメリカで稼ぐ家族や親戚が買ってくれるのさ」と何でもないように言った。
米国には200万人近いキューバ系移民が暮らす。年に数回、帰省し、稼いだ金で親類縁者に家電や衣服を持ち帰るのが日常の光景だ。「今ではキューバ人の98%は米国に家族か親戚がいる」と話す女性もいた。
キューバと米国との断交は半世紀以上。だが、庶民レベルでは少しずつ、着実に米国とつながっていた。 (北島忠輔)