2015年07月12日
大地震の後、救援物資の輸送もままならないころのネパール。「日本人記者が来たら、取材を受ける側も物をくれると期待する」とのアドバイスを受け、チョコレートとレトルトのタイカレーを持って赴いた。これがさまざまな驚きをもたらした。
レトルトカレーなら湯に入れるだけで食べられる。喜んでもらえると思ったが、山間部ではレトルトを見るのが生まれて初めてという人も多い。渡すとすぐビリっと袋を破こうとする。「おいおい、それは・・・」。こちらが慌てて説明に追われた。
別の山奥の村では「開けたら急いで食べます。ここは飢えた虎が多い。匂いで寄って来るから」と真剣に言われたことも。
一方、うち解けるきっかけになったことも。親を地震で失った女の子はなかなか心を開いてくれない。取材を切り上げ、チョコレートをあげた。その場を離れ、別の取材をすませ、戻って、女の子に別れのあいさつで握手しようとしたら、女の子は照れ笑い。
差し出してくれた手の中は溶けたチョコレート。「本当においしくて、夢中で食べたの。ありがとう」。その笑顔に救われた。 (伊東誠)