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パリ 善意が不満埋める街

2015年07月16日

 金曜の朝は、2歳の息子を託児所に送り届けるのが役目だ。仕事用のかばんを肩にかけ、ぐずる息子を腕に抱えて、あやしながら地下鉄に乗り込む。

 毎回、不満に思うのはパリの地下鉄の施設の不便さだ。一人の時は、感じないが、息子を連れている時はそうはいかない。日本では当たり前のエレベーターがない駅も多く、階段を使わなくてはならない。乗り換えをすれば、苦痛は増す。

 パリの地下鉄の構造は、人に優しい、バリアフリーとは言い難い。ベビーカーを押した母親やお年寄りはさぞ大変だろう。留学中、ホームステイ先の70代のマダムにこぼすと「私みたいにバスに乗ればいいの。バリアフリーで快適よ」。あっさり切り返された。その通りだが、街に不案内な旅行者や外国人にはバスは難易度が高いわけで・・・。

 でも悪い事ばかりじゃない。幼子を連れていれば、とにかく親切。大抵、席は譲ってくれるし、階段ではさらりとベビーカーを持って助けてくれる。ママたちはベビーカーを広げ、堂々と乗っている。

 人の善意が、不満を埋めてくれる-。この街にはこんな良さもある。 (渡辺泰之)