2015年07月29日
苦労が刻まれた顔が、この日ばかりは明るく華やいだ。
脱北者同士や、脱北者と韓国人などのカップル100組が、ソウルで挙げた合同結婚式。タキシードとウエディングドレスに身を包んだ新郎新婦が、次々と赤じゅうたんの上を進む光景は圧巻だった。
経済的な困難などで式を挙げていないカップルを支援しようと、韓国政府などが企画。20代もいたが、大半を占めたのは中年以上のカップルで、すでに10年以上、助け合って暮らしてきた夫婦もいた。
取材する報道陣に対して「了解を得られない限り、顔は報道しないように」と求める放送が何度も流れた。本人を特定できる画像が報道されれば、北朝鮮に残る家族や親類に、危険が及びかねないからだ。
17年前に脱北したという新婦(56)は「前夫との間にできた息子2人が、北朝鮮の監獄にいる。自分だけ幸せになって…」と目元をぬぐい、新郎(60)が肩を抱き慰めていた。
最後の記念撮影では、100組が壇上に並んで喜びを表した。報道できない集合写真は、笑顔なのに、悲しみが詰まっているように見えた。(島崎諭生)