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ソウル 程よい関係 路地酒場

2015年09月04日

 同僚と暑気払いでビールを飲みに出掛けた。支局から地下鉄で2駅先の問屋街にある大衆酒場。午後7時前からほぼ満席の盛況ぶりだった。

 路地に面した席に座るなり、何も注文しなくても店員がジョッキにつがれたビールとおつまみの干しダラを持ってきてくれた。次々と客が来るため、店員らは店の前の路地にまでどんどんテーブルといすを並べ、即席のビアガーデンと化す。

 しばらくすると、軽トラックが狭い通りに入ってきた。ビアガーデンも撤収かなと思ってみていると、テーブルとテーブルの間を、トラックはスルスルと徐行していった。

 よく見ると、路面には車1台がぎりぎり通れる幅に黄色いテープが貼られている。テーブルは「車道」側にはみ出さないよう置かれていたのだ。トラックで往来する商店主と酒場との共存関係に感じ入った。

 「この店、いつからやっているの?」。店員に尋ねると「30年以上前から」とのこと。驚いたのは、正午から深夜0時まで、年中無休という営業時間。まさに酒飲みの聖地のような店で、いつまででも座っていたくなった。 (中村清)