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米コリンズビル 忘れられた世界遺産

2015年09月29日

 出張先のミズーリ州からミシシッピ川を渡り、隣接するイリノイ州を車で走った。「何もないところだな」と思って走っていると、不自然に膨らんだ小高い丘が見えた。控えめな看板には「カホキア・マウンド」とある。併設された施設前に立って驚いた。ユネスコの世界遺産であることを示す旗が翻っていた。

 8~13世紀に栄えた先住民の集落跡。ピーク時は2万人ほどが集団生活を営み、120基の墳丘があった。長が住んでいたとされる高さ30メートルのマウンドは宗教儀式などを行うために住民が築いた。土台の面積はエジプトのピラミッドをしのぐ。
 北米最大級の先住民集落にもかかわらず、あまり知られていないようだった。係員は「米国では植民地支配からの独立が歴史の始まり。ここは忘れられた都市なのです」と話していた。

 欧州から開拓者が渡ってきた16世紀には、すでに集落は消え、マウンドだけが残っていたという。

 墓でもあったかのような丘に登って目を閉じた。西洋の文明にかき消され「先史時代」とひとくくりにされてしまう先住民の暮らしを思い浮かべた。 (北島忠輔)