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北京 警察官からの「助言」

2015年10月20日

 6年ぶりに赴任した北京。記者登録のため市公安局へ出向くと、書類を受け取る警察官に見覚えがあった。彼も「おお、また来たのか!」と声をかけてきた。感動の再会、と言いたいがそうでもない。彼は外国人記者の監視役でもあるからだ。

 彼は「あんたは六四(リウスー)の取材をよくしてたよなー」と懐かしげに話す。六四とは1989年6月4日に起きた天安門事件。前回の赴任時は事件から20年で、軍に殺された学生の遺族や元共産党幹部らを取材した。私を監視していた警察官はあなただったんだね…。

 その彼が周りをキョロキョロ見ながら小声になった。「十八大(シーパーダー)以降、中国は変わった。もう昔みたいな取材はできないぞ。気を付けろ」。十八大とは、習近平氏が共産党総書記に就任した2012年の第18回党大会を指す。習氏は汚職の摘発キャンペーンで国民の人気が高い一方、民主化運動や言論活動への弾圧も激しい。

 警察官は職務として「警告」したわけだが、その言い方がまるで友人への助言のよう。「老朋友(ラオポンヨウ)」には悪いが、彼が困るような記事を書かねばなるまい。 (平岩勇司)