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北京 現場の営業が生命線

2015年10月22日

 「この書類持ってきた? なければビザは出ないよ」。米国出張を控え、ビザ申請のために米大使館前に着くと、中国人男性から不意に声を掛けられた。

 米国のビザ申請には、ネットを通じて氏名やパスポートナンバーを入力した後、プリンターでその書類を印刷。書類にはバーコードが付いていて、当日に持参することが必要だ。

 だが、慌てて持ってくるのを忘れる人も多いのだろう。そこで男性のような「印刷屋」が登場する。大使館前で書類を忘れた人を探し出し、持ってきたパソコンとプリンターで書類をその場で印刷してくれるのだ。

 丁重に男性の申し出を断ると、今度は「旅行業者」の群れに囲まれた。手渡してきた名刺には「国際便の予約代行」「ホテル探します」の文字が。業者にとって北京の大使館前は顧客を獲得する場となっている。

 だが、中国人の知人によると「それは序の口」だとか。聞くと、大使館の中には書類とパスポート以外を持ち込めないため「預かり屋」も繁盛しているという。競争の激しい中国社会。事務所に座っているだけでは客が来ない。現場の営業力が命だと知った。 (秦淳哉)