2015年12月14日
ミャンマー北部の山あいの景勝地ミッソンは、2つの川が合流する大河イラワジ川の起点。観光で訪れるのは地元の人がほとんどで、川原のテントでのんびり過ごしている。
ここに2008年、中国企業によるダム建設の計画が持ち上がった。発電量の9割を中国へ送る契約で、環境破壊を懸念する自然保護団体などが反対。テイン・セイン政権が11年に計画凍結を決めた。
「でも地元ではいつ再開されるか分からないと警戒しているんだ」。川を見下ろす丘の食堂で、近くに住む男性(59)が不安を口にした。中国企業の幹部は今でも州都ミッチーナに駐在し、いつかは建設する気だとうわさされている。
男性は目の前の川で捕れたチョンガルーというアマゴに似た魚を振る舞ってくれた。ニンニクやトウガラシなどのスパイスをすり込み、大きな葉っぱで包んだ蒸し焼き。日本のにごり酒のような、コメからつくった地元のお酒に合う。
「この魚を忘れないでくれ」と男性は言った。彼が伝えたかったのは、自慢料理のおいしさと魚が生息する自然の大切さだったと思う。 (大橋洋一郎)