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北京 人力車 30分の平和論

2015年12月16日

 日曜の深夜、タクシーがつかまらない。困っていると、人力車の車夫が「乗ってきな。安くしとくよ」と声をかけてきた。

 李さんという男性は小柄で63歳。私の体重は110キロもある。「大丈夫。ピューッと進むよ」。明るくペダルをこぐが案の定、歩くより遅い。上り坂では手押しする。申し訳ない気分になったが、私が日本人と知ると次々と話しかけてくる。

 「安倍首相は安保法案を押し切ったから好きじゃない。でも日本の国民が強く反対したのも知ってる」「日本は中国と違って空気がきれいで、国民も礼儀正しいんだよな」

 李さんは小さな工場を人員整理で解雇された15年前から、輪タクを始めたという。年金は月1300元(約2万5000円)あるが、妻も病気がちで物価高の北京では生活できない。連日午前2時まで、タクシーにあぶれた客を乗せている。

 「何とか暮らせるのも平和だから。日本とは問題も多いが、戦争だけはいけない。大切なのは話し合いだ」。地下鉄で2駅分の自宅まで30分、息を切らした李さんの持論を楽しく拝聴した。珍しく、夜空の月も明るく輝いていた。 (平岩勇司)

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