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ロンドン 検診大国を脱出して

2015年12月17日

 ロンドンに赴任して初めての健康診断。会社の制度を使って毎年受けていた乳がん検診もついでに、とマンモグラフィー(乳房エックス線撮影)を申し込んだら、行政の規定で40歳以上でないと駄目だという。

 日本では毎回、乳腺の疾患を指摘され「要経過観察」「要再検査」と結果に脅されてきた。少し不安だったが、医師いわく「英国は日本のような予防医療の概念が薄いんです。一応、自己チェックは続けて」。乳がん患者の8割は50代以上。英国の公的医療制度が提供するマンモグラフィー検査も50歳以上、3年に1回だけだ。それで足りるのかもしれない。

 思えば赴任前の義務で初めて人間ドックを受けた時も、予期せぬ内臓の腫れが見つかった。日本と英国で精密検査に追われた揚げ句、結果は「たぶん生まれつき」。残ったのは徒労感と保険外の高額な費用。

 もちろん、検診やドックが生死を分けることもある。でも、検査、検査で余計な不安を抱えるのも、人生を損しているような。もともと神経質には程遠いけれど、日本より大ざっぱな英国生活で、考えさせられることは多い。 (小嶋麻友美)