2015年12月22日
「今夜は趣向を変えて、私が気に入っているプログラムを紹介します。というのも、私にとって本日が最後の番組です。物事は移ろいゆくもの。私にもその時がやって来ました」
ワシントンのラジオ局が毎日曜夜、4時間にわたり放送する長寿番組「ザ・ビッグ・ブロードキャスト」。そのディスクジョッキー(DJ)のエド・ウォーカーさんはこう切り出した。がんに侵されたウォーカーさんの声は弱々しかった。
ウォーカーさんは生まれながら盲目で、幼い頃からラジオに親しみ、学生時代にラジオの仕事に就いた。コメディアンの友人とコンビを組んだコント番組が人気を博した。
25年前からは、1930~50年代のラジオの黄金時代にはやったドラマ番組を紹介する「ザ・ビッグ・ブロードキャスト」を担当した。
最後の番組は入院先の病室で収録した。キャリア65年の老DJは声がよく出るからと言って、ベッドから起き上がり背筋を伸ばして収録を続けた。
ウォーカーさんは家族に囲まれ、幕引きとなった番組を聴いた。その数時間後、息を引き取った。享年83。 (青木睦)