2015年12月24日

　内戦が続くシリアから欧州密航を目指す難民の出発地となっているトルコ西部イズミル。シリア難民と密航業者の仲介をしている男性（２７）は、話をしている途中に突然泣きだした。

　「優秀なシリア人たちがみな欧州を目指し密航していく。彼らはもう故郷に戻ることはないだろう。人材がいなくなった故郷に未来はない」

　男性もシリア人。密航を助ける仕事はしたくないが「シリア難民であふれるトルコで今、シリア人が金を稼げる仕事は少ない。生活のためには仕方ない」と話した。

　夫婦２人で暮らしている。幼児だった娘は過激派組織「イスラム国」（ＩＳ）の狙撃手に撃ち殺された。その後、夫婦２人でトルコに逃れた。

　最大都市イスタンブールで重労働をこなしたが、給料に比べ生活費が高すぎて暮らせず、イズミルにやってきた。男性は「チャンスさえあれば、生活を変えられる」と信じている。

　海を渡る難民は欧州でのチャンスを夢に見、この男性はトルコでのチャンスを求めている。国民にチャンスを与えられない国の未来は明るくない。　（中村禎一郎）