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ソウル 親切の連鎖 新参者に

2016年01月14日

 赴任初日、スーツケースやリュックを抱え、妻と3人の子を連れてソウルの電車に乗った。大量の荷物に悪戦苦闘、子どもの引率もままならない私たちを見かね、着席していた壮年の女性2人が「お子さんを座らせてあげて」。一度は遠慮したが「どうしても」と言うので、ありがたく譲っていただいた。

 ここまではよくある話。だが、電車ではその直後、壮年の男性が立ち上がって女性のために席を空けた。さらに若者が席を立ち、隣のカップルも席を譲り…。人から人へと親切が連鎖していった。目的地に到着した際、1歳の娘を抱きかかえて車両から降ろしてくれる人までいた。

 韓国人は日本人よりずっと感情の表現が直接的だ。声が大きく、意見も率直にぶつける。ぶしつけだと感じることもあるが、電車内でのように人助けをためらわない姿は、来韓したばかりのわれわれにとって新鮮で心に響くものだった。

 ただ、電車を降ろしてもらった娘は驚いて泣きだし、抱っこしてくれた女性を恐縮させてしまった。新たな国の人々と習慣に、子どもたちと一緒に慣れていきたい。 (上野実輝彦)