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ソウル 民衆の怒り 本気度は

2016年01月20日

 警察車両を並べた「車壁」にロープを掛け、引っ張ってこじ開けようとするデモ隊に、警官隊が放水銃で催涙剤を含む大量の水を発射する。11月中旬、ソウル中心部に約8万人(警察推計)が集まった労働団体のデモは、一部が警官隊と衝突。放水を受けて頭を打ったデモ隊の1人が重体となっている。

 朴槿恵(パククネ)政権が進める歴史教科書国定化に反対し、賃金格差などに反発するデモで、約7年ぶりの大規模なものだった。デモ隊に占拠され通行が止まった大通りの光景は、すわ政権転覆かとさえ思わせる事態だった。

 ただ、大部分のデモ隊の行動は抑制的。1人が火が付いたたいまつを警官隊に投げると、周囲は「危ないじゃないか」とたしなめた。周辺には串焼きなどを売る屋台も出て、参加者が舌鼓を打つ姿も。午後11時を過ぎるとほとんどの参加者が散会し、翌日には、いつもと変わらない街の風景が戻った。

 1日限りのイベントのようなデモに、「ガス抜きではないの?」という違和感も。世論調査では、デモに対する評価が低かった。朴政権に対する民衆の怒りがどこまで本物なのか、測りかねている。 (島崎諭生)