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ヤンゴン スラムからの声 届け

2016年02月09日

 11月のミャンマー総選挙直前にヤンゴン郊外のラインターヤー地区を訪ねた。竹と葉っぱで作った簡素な小屋が湿地のわきにびっしりと並ぶスラムだ。さまざまな事情を抱えた人たちが各地から集まっている。

 主婦のエイ・シュエさん(62)は7年ほど前、南部イラワジ地域の海沿いの街から移り住んだ。死者・行方不明者14万人という大被害をもたらしたサイクロン「ナルギス」で家を流され、漁師の夫は行方不明になり、生活できなくなったからだ。

 今は10代後半の娘と息子が一緒に暮らす。娘は縫製工場、息子は飲食店で働き、家計を支えてくれる。「ここの生活に満足してないけど、悪くはない」。小屋が古くなったので、建て直すのが楽しみという。自然災害で人生が変わる苦労を味わいながら、前向きで明るい。

 ただ、心配なのは「総選挙が終わったら、スラムが撤去されてしまう」とうわさで聞いたこと。真偽は定かでないが、他に行くあてがあるはずもなく、家がなくなり、追い出されたら暮らしていけない。新政権を担うアウン・サン・スー・チーさんにスラムからの声は届くだろうか。 (大橋洋一郎)