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韓国・水原 名君目指し城跡進め

2016年02月18日

 「まだ歩くのか…」。荒く息をつきながら、ひたすら歩を進めた。ソウルから南に35キロ、水原(スウォン)市にある城跡・華城(ファソン)を訪れた時のことだ。

 面積130ヘクタール、城壁の全長5.7キロの広大な城は、李氏朝鮮の名君正祖(チョンジョ)が18世紀末に建築した。実学を重んじ西洋の近代建築技術を導入した結果、工期は短く堅固かつ様式美に優れ、1997年にはユネスコ世界文化遺産にも登録された。

 もっと親しみやすい説明がある。韓流ドラマ「チャングムの誓い」のロケ地だということだ。そして正祖はTVドラマ「イ・サン」や韓国映画「逆鱗(げきりん)」(邦題・王の涙)のモデルとなっている。

 映画の中で、正祖は体を鍛え上げていた。政争で父を失い自らも命を狙われる中、他人より強くあらねばとの思いが強かったのだろう。私も王に近づこうとばかりに、城跡踏破を試みたのだが、結果は冒頭の通り。

 その脇を運動着の学生たちが軽やかに走り抜けていく。市内の高校生で「よくここでトレーニングしている」とのこと。彼らは名君の「体を鍛える」という意思を実践しているかのように思われた。 (上野実輝彦)