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パリ 消えない傷 出勤阻む

2016年03月08日

 パリ近郊のマンション。ノエミーさん(28)が自宅に招き入れてくれた。1年前、ユダヤ系食品店に武装した男が立てこもり、4人が殺害されたテロ事件。店内でテロに遭遇した被害者の一人だ。

 「人の役に立つことが生きがい」と語る彼女の職業は看護師。休日にもボランティアに精を出す活発な女性だった。テロは充実していた日常を彼女から奪った。

 事件後、悪夢を見るようになり、職場に足を運ぶことができなくなった。地下鉄やバスに乗れず、自宅から出ることも困難になった。同居する両親や兄弟が仕事に出る日中は一人で過ごす。テレビを見て「頭で考えないようにしている」。

 「朝、出勤することが楽しみ」だった。大好きな仕事に行けない現状が苦しさに拍車をかける。

 事件当時、地下の冷蔵室に身を隠したノエミーさん。一緒に息を潜めた他の被害者とは今も連絡を取り合い、生活状況などを話し合う。「みんな私と同じような問題を抱えています。以前のように生活することは難しいんです」。心の傷と狂った人生-。テロがもたらした惨劇の深さを思う。 (渡辺泰之)