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韓国・旌善 茶色の中のスキー場

2016年03月16日

 「不自然」という言葉がこれほど似合うと感じたことはなかった。ソウルから東に約130キロ、2018年平昌(ピョンチャン)冬季五輪でアルペンスキー会場となる旌善(チョンソン)郡。日本でスキー場といえば一帯はすべて雪景色だが、旌善では雪のない茶色い山々の合間に、人工雪の積もった滑走コースが白くぽつんと浮かんでいた。

 山林を削った会場の一部にはまだ赤茶けた土も残り、人工雪がまだら模様を描いている。滑ってみると、フワフワの新雪とガリガリのアイスバーンが入れ替わりで3度ずつ現れた。かつて長野県で3年間勤務し、スキーもそれなりに経験したが、こんなコースは初めてだ。

 そもそもあまり雪が降る地域ではないらしく、工事も遅れ気味。1月末に予定していた国際大会は急きょ中止になった。記者会見では、環境への悪影響を問われた担当大臣が「五輪に合うスキー場が他にないから造らざるを得なかった」と、本末転倒な回答をした。

 こんなふうな、ちぐはぐを目にするにつけ、冬季五輪開催に意義があるのか考えてしまう。ちなみに削った山は、五輪後に埋め戻し、山林を復元する計画という。 (上野実輝彦)