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中国・重慶 火鍋を変えた豊かさ

2016年03月31日

 春節(旧正月)休暇で訪れた重慶市の友と5年ぶりに旧交を温め、宴席を囲んだ。市部拡大で編入された旧四川省の農村で、市街地からバスやタクシーを乗り継ぎ5時間近くかかった。

 湯気の立つ名物の重慶鍋を見て驚いたのは、トウガラシで真っ赤な伝統的な火鍋でなく、仕切られた鍋の半分は辛くないスープの鴛鴦鍋(おしどりなべ)といわれる体裁だったことだ。火鍋は舌がしびれるほどの強烈な刺激が持ち味。大都会で人気の鴛鴦鍋だが、かつては重慶の友は見向きもしなかった。

 子どもたちは薄味スープの骨付き肉をパクパク。辛みが染み込んだホクホクのジャガイモが美味だったが、友人たちは「貧しい時代に食べ飽きたね。激辛は健康にも悪い」。

 アルコール度数60度以上の強烈な「白酒」での乾杯も今回は32度とまろやかに。寒暖差が激しく貧しい内陸で、かつては強烈な酒と火鍋が四川人の身も心も満たしてきた。

 人口の8割を農民が占めた中国だが、5年前に都市人口が農村人口を超えた。穏やかで健康志向の火鍋と白酒は、豊かになった農村の象徴なのかも。 (加藤直人)