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スウェーデン・マルメ 難民殺到で隣国遠く

2016年04月06日

 デンマークのコペンハーゲン空港から列車で30分-のはずだった。スウェーデン南部のマルメとの間の海峡を結ぶ橋が2000年に開通して以来、近さが売りだった。1万5000人の通勤客ら、パスポートなしで両国を行き来する人は1日9万5000人。“国境なき欧州”の象徴は難民・移民の殺到で変容した。

 空港直通の鉄道駅では、入り口をふさぐように国境警備員がずらり。写真付き身分証を見せなければ乗れない。海を渡ってスウェーデン側の最初の駅で列車は止まり、今度は警察官が身分証確認にやってきた。夜遅く乗客は少なかったが、15分以上停車した。思ったよりずっとマルメは遠かった。

 不便になっても「仕方ない」と地元の人は言う。反移民の政党が支持を広げ、政府は難民・移民を抑える政策を導入しつつある。一方、赤十字職員のソフィアさん(28)は「傷ついた難民たちを助けるのは当たり前。スウェーデンにできることは、まだある」と力を込める。

 人道を重視する国民性が失われたわけではない。ただ、あまりの混乱に立ち止まり、思い煩うスウェーデンを、国境で感じた。 (小嶋麻友美)