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カイロ  原油マネー降り注ぐ

2016年05月30日

 原油で潤う湾岸諸国からの客とおぼしき男性が、水たばこを吸いながら、天井に向かって紙幣の束を投げた。赤い光に包まれたホールに、大音量の音楽が響く。ヒラヒラと落ちてくる紙幣の中で、エジプト人女性が踊っている。床に落ちた紙幣を、エジプト人の男性スタッフがしゃがんで拾い集めていた。

 カイロにあるナイトクラブに行った。映画やドラマに出てきそうな昭和のキャバレーといった雰囲気。踊りや歌は午前1時前後から始まり、朝まで続く。湾岸諸国やエジプトは飲酒を禁じられているイスラム教徒が多数を占めるが、ほとんどの客はアルコールを頼んでいた。

 料金は1人600エジプトポンド(約8600円)から。当然、座席や注文次第で加算される。産油国でないエジプトの一般市民が入るのは難しい値段だ。

 午前4時に近づいたころ、ナイトクラブはほぼ満席に。女性の踊りが激しさを増す。今度は水たばこの男性とは別の客が競うかのように、踊る女性の頭上に次々と紙幣を放った。踊っているのは誰で、踊らせているのは一体誰なのか-。そんな疑問がふと、頭に浮かんだ。 (中村禎一郎)