2016年04月28日
首都ワシントンからペンシルベニア州ピッツバーグまで約400キロ。米国勤務最後の週末に自動車を運転して出掛けた。渋滞もなく、どこまでも広がる丘陵地帯のハイウエーをひたすらに時速100キロで走る。
昨年夏以来進んだ原油安の恩恵を受け、3年前の着任時と比べてガソリン代は1ガロン(約3.8リットル)2ドルとほぼ半額になった。1リットルなら約60円。航空料金と比較すれば、家族連れの米国人が車で旅行をするのもうなずける。まさに自動車社会だ。
4年前、上昇するガソリン価格が大統領選の重要なテーマとなった。オバマ大統領は共和党対立候補から「オバマ氏の政策がガソリン高を招いた」と激しく批判され、支持率が急落。中東問題が悪化すれば価格上昇となると攻め立てられた。
ガソリンは多くの米国民に日々の生活の中で中東を意識させてきた。しかしその価格は半分になり、米国民にとって中東は少なからず遠くなったのではないか。政治のプロでない不動産王ドナルド・トランプ氏ら「異端」な候補が着目される今大統領選には、そんな米国人の内向きになる心情も反映されているように思えた。 (斉場保伸)