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エジプト・エルクババット 砂漠の中で立ち往生

2016年05月23日

 取材先に向かう途中、高速道路で突然、車が動かなくなってしまった。よりによって砂漠の真ん中での故障。念のためだが、日本車ではない。

 幸い携帯電話は通じた。衛星利用測位システム(GPS)機能で調べると、首都カイロから100キロほど南のエルクババットという場所のようだった。

 車が止まった午前8時ごろはまだ涼しかったが、気温は次第に上がり、太陽が照り付けてくる。かつて、この日差しや砂嵐、盗賊などを敵に回して砂漠を旅した人々は命懸けだったのだろう。

 先人たちはその後、科学技術を発達させ、砂漠で立ち往生しても命の危険を感じない文明をつくりあげてきた。少々大げさに言うならば、今回の一件で、先人の功績に感謝しなければならないと、あらためて感じた。

 もちろん、街から遠い砂漠で問題を解決するのは、現代でも容易でない。故障現場から車を移動させるためにカイロの複数のレッカー業者に電話した。

 わが支局はこの日無人だったうえ、エジプトでは1人暮らしの当方に、すべての業者がこう主張してきた。「先に料金を支払え」(中村禎一郎)