2016年05月18日
中国遼寧省瀋陽から北朝鮮との国境の街・丹東まで、高速鉄道に乗った。普通席がいっぱいだったので、ワンランク上のビジネス席を確保。この席が配置されているのは1車両のみ。車両内には5席しかなく、乗客は私ひとりだけだった。
座り心地最高の高級シートに加え、お弁当とドリンクのサービスも付いており、約1時間半の旅はぜいたくな気分を味わうはずだった。ところが少しばかり、当てが外れた。
「昼飯は食べたのか?」。うつらうつらしていると、携帯電話に向かって話していると思われる大きな声が、背後にある扉の向こうから伝わってきた。ビジネス車両は、運転室と扉を隔てて隣接している。笑い声も聞こえた。
まもなく、制服姿の運転士が弁当の入った袋をぶら下げて、運転室から出てきた。私の隣の席にドスンと腰を下ろすと、はばかることなく、弁当をほおばり始めた。
運転室には人が残っているのだろうが、のどかに走る鈍行列車でもとんでもないこと。ましてや中国が誇る先端交通。運転士の振る舞いに腹が立つより、背筋がヒヤリ“人災”の2文字が浮かんだ。(城内康伸)