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中国・駐馬店 新幹線座席の大移動

2016年06月27日

 河南省駐馬店の出張先から北京へ戻るため、日本の新幹線にあたる高速鉄道に乗り込んだ。指定座席に着くと、既に男性が座っている。「彼女と隣の席に座りたいんだ。悪いけど、後ろの僕の席に座ってよ」。当然の権利のような話しぶりだ。

 中国では乗車券を二枚買っても席が離れ離れになることが多い。車両が違うことすらある。なので私も同意して移動した。しかし、これも珍しくないのだが、その後ろの席にも別人が座っている。「家族で一緒に座りたいの。悪いけど、前の私の席へ…」。面倒なので結局、私も空いた席に適当に座る。

 列車が進むにつれ、車両は満席になった。そして、ついに私が座っている席に「本当の客」が現れた。私は本来の座席に戻り、「席を譲って」と頼む。すると玉突きのように、車両全体で次々と乗客が座席を移る「大移動」が始まった。

 次の主要駅で多くの乗客が降り、車両はガラガラとなった。自分が一駅ぐらい立っていれば良かったか…。無駄に人々を移動させたようでバツが悪く感じたが、すぐ思い直した。「そもそも、もっと切符をうまく売ってくれよ!」 (平岩勇司)