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韓国・延坪島 砲撃の島願い届くか

2016年08月18日

 焼けて崩れ落ちた民家の壁、砲弾の破片で穴が開いたヤカンや熱で溶けたガラス瓶は、突然の砲撃が住民の日常を襲ったことを、生々しく伝えていた。

 6年前に北朝鮮軍に砲撃された韓国北西部の延坪島(ヨンピョンド)を訪れた。砲撃に遭った住宅を当時の姿のまま残した「安保教育館」では、攻撃のすさまじさを実感した。「いつも心の中に不安を感じる」。砲撃を体験した解説員は、今も消えない恐怖心を明かした。

 島の展望台からは、すぐ近くに北朝鮮領の小島が見えた。その間の海に引かれた北方限界線(NLL)を越えて、北朝鮮や中国の漁船が韓国領海に侵入し今も紛争が絶えない。島には海岸砲や哨戒所が至る所に設置され、韓国軍による射撃訓練の銃声が響いていた。

 それでも、住民は北朝鮮を憎まず「1日も早く統一したい」と口をそろえた。それは中国漁船を追い払えて、砲撃もなくなるから? こう想像していると違う言葉が返ってきた。

 「計算や理屈は必要ない。同胞なんだから、無条件で統一しないといけないんだ」。民族の絆に込める思いの深さを、胸に刻んだ。 (島崎諭生)