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ソウル 故郷いずこ 私の人生

2016年09月02日

 「安住の地はどこなのか、今も分からない。さすらい続けているんです」。朝鮮人を親に持ち、植民地時代に日本本土で出生。戦後の「帰還事業」で北朝鮮に渡った後に脱北し、現在はソウルで暮らす李泰●(イテギョン)さん(64)は、こう語りながら視線を落とした。

 李さんによれば、日本出身者は北朝鮮で「出自が悪い」とされ、厳しい監視下で差別を受けた。密告やぬれぎぬで、周囲の日本出身者が何人も政治犯収容所へ送られる中、自らや家族を守るため、反発心をひた隠して体制に忠誠を誓っていた。

 半世紀近くを北朝鮮で暮らした後、脱北に成功。その後の人生を過ごす韓国と、9歳まで過ごした日本は「天国のようだ」と感じている。

 「それでも・・・」と続ける李さん。脱北後に居住を希望した日本には受け入れられなかった。韓国では「北から来た人間だ」とうわさされ、高齢のため就業できず生活保護を受けている。時代に翻弄(ほんろう)された李さんは「一生懸命生きてきたが、故郷と呼べる場所はなかった。せめて、脱北した在日コリアンの苦難を人々に知ってもらいたい」と話した。 (上野実輝彦)

 ※●は日の下に火

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