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釜山 アートと生活感 同居

2016年09月30日

 山肌を削った斜面に密集する民家、水平線を望む絶景-。ペルーにある古代インカの遺跡「マチュピチュ」に例えられる観光地があると聞き、釜山の甘川(カムチョン)文化村を訪れた。

 もともとは朝鮮戦争時、市外からの避難民が住む集落だった。急ごしらえのためか、家の造りは簡素で小ぶり。急坂が多く集落内の移動も不便で、一時はスラム化していたらしい。

 だが、情景に魅了された芸術家たちが廃屋を利用してギャラリーを造り始め、2009年には町おこし事業で観光地に生まれ変わった。一般住民の生活を垣間見ながらアートを楽しめる地域となっている。

 「マチュピチュ」を味わい尽くそうと意気込んで散策を始めたものの、気温は35度。急勾配の階段を上り下りしながら踏破するのは無理で、パンフレットのお薦めスポットを回るのが精いっぱいだった。

 汗をぬぐい水分補給していると、住民らしきおばちゃんが「あんた、大丈夫かい」。ニヤリとこちらを見ると、軽い足取りで階段を上っていった。ポップな現代美術と、長年住んでいる人々のたくましさの対比が実に印象的だった。 (上野実輝彦)