2016年10月03日
北京から東へ約300キロ離れた渤海湾を望む河北省秦皇島市北戴河。毎年夏になると、中国指導部や長老らが重要政策を話し合う非公式の会議「北戴河会議」が開かれる避暑地だ。
秦皇島駅で高速鉄道を降りてタクシーで幹線道路を南へと向かうと、北戴河地区への入り口に検問所。若い警察官が身分証の提示を求めた。私の旅券と私を何度も見比べた末、通行を許可した。域内の道路は森林に挟まれ、軽井沢にいるような感覚を覚える。
海辺に近い北側の一帯は要人の保養施設が集まり、運転手によると、夏季には一般人の立ち入りは禁止。さらに南に位置する南戴河に向かう途中だったが、両地区をつなぐ海岸沿いの道路は通行止め。会議の開催期間にぶつかったらしく、大回りせざるを得なかった。
2日後に北上する時、道路の封鎖は解除されており、避暑客の車で混雑していた。「会議が終わったようだね」。そう言う運転手が指さす遠く先には、静謐(せいひつ)な林の中に、要人たちの別荘とみられる洋館が見えた。「庶民とは無関係の別世界だ」。運転手は表情を変えずに、ひと言継ぎ足した。 (城内康伸)