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中国・ウルムチ 手玉に取られぬ気概

2016年10月06日

 2009年のウルムチ騒乱以来、外国記者が個人で自由に取材することは難しかった新疆ウイグル自治区を訪れた。

 中国政府が外国メディアを招いた「一帯一路経済圏構想」の10日余の研修会。地元政府幹部や学者らが日替わりで毎日4時間以上も熱弁をふるった。自由に新疆の今を取材する時間はほとんどなく、構想の宣伝工作の色合いが濃厚だった。

 招待された記者はロシア、タジキスタン、アフガニスタン、パキスタンなど新疆周辺国が中心。彼らにはロシア語、英語通訳がついたが、私を含む日本人特派員2人は受講、質疑応答など中国語のみの対応で、冷え込む日中関係を象徴するかのよう。

 宴会のない夜、周辺国の記者を誘って夕食に出た。南シナ海の問題で、ある記者は「国際法を守ってこそ大国」。別の記者は「一帯一路構想は国威発揚に映る」。神妙そうに講義に聞き入っていた姿とは別人のように鋭い中国批判が噴き出した。

 研修会は最近だけで5回目。中国の宣伝工作の巧みさとともに、強大化する隣国とうまく付き合いながら、簡単にはその手に乗らぬ周辺国記者の記者魂を見た思いだった。 (加藤直人)