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北京 歩行者に優しい道を

2016年10月13日

 北京では「歩行者優先」という言葉は決して通じない。横断歩道を渡る時、自動車は停止してくれないどころか、減速さえせずに突っ込んでくる。歩道に乗り上げて駐車する車が列をなし、歩行者が車を避けて、車道を迂回(うかい)通行せざるを得ないケースも日常茶飯事だ。

 わずか1週間に2度、事故に遭いそうになった。1件目は横断歩道で前方の信号が青に変わり、渡ろうとした時。高級乗用車が猛スピードで後方から右折してきた。中国では車は右側通行。車は私の数10センチ前方を、風を切って走り抜けていった。

 2件目は歩道を歩いていた時だった。歩道に乗り上げて駐車していた四輪駆動の横を通過しようとしたところ、運転席のドアが勢いよく開いた。とっさに左手でドアを押しとどめ、事なきを得たが、危うくドアにはじき飛ばされるところだった。

 車は私と向かい合って止まっていた。降車を妨げられたドライバーが大声でののしる。「立場が逆だろ」という言葉をのみ込んだ。

 ここでは「自動車優先」が当たり前と言わんばかりの運転マナー。もう少し歩行者に優しい社会にならないものか。 (城内康伸)