2016年10月18日
目の前にすべり込んできたリオデジャネイロ五輪のメイン会場に向かうバス。ひどい混み具合に乗り込むのをためらった。
まさに立すいの余地もない超満員。乗客はみんな、私の動きを見ている。その1人が手招きしていた。「大丈夫、乗れるよ」と。
おそるおそる、踏み出した。取っ手をつかむのが精いっぱい。「東京では駅員が手伝ってくれたな」と思い出したが、ここはブラジル。頼れる人もおらず、グイグイと体を押し付けた。
一歩、また一歩。閉まり始めたドアに押され、車内に収まった。「ふう」とため息をつくと、思わぬ歓迎が待っていた。
「パチ、パチ、パチ」。私の奮闘を見ていた乗客から拍手が起きた。「リオへようこそ」。周りの笑顔に、東京の満員電車に漂う「負のオーラ」との差がおかしく、笑えてきた。
五輪開催都市にとって、観客の輸送は大会の成否を分けるカギだという。2020年の東京五輪では、通勤ラッシュに驚く外国人客もいるはずだ。
乗客はどんな表情で迎えるのか。招致時にアピールした「おもてなしの心」は、そんな時にも試される。 (北島忠輔)