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ベルリン 「見えない壁」の傷痕

2016年10月21日

 夏の夕方、ベルリンの自宅付近をひとり散歩中、川べりの茂みの下に目立たぬ碑を見つけた。約50年前、ここでボートに乗った男性が射殺され、同乗の女性も重傷を負ったと書いてある。薄気味が悪くなり、逃げるように立ち去った。

 そこはちょうど旧西ベルリンと旧東ドイツ領ポツダム市の境。1965年7月15日、西ベルリンの事業家ヘルマン・デーブラー氏は好天の下、彼女と2人、ボートで湖を出発。途中、水路を航行中、知らぬ間に国境を越え、東ドイツの国境警備隊員にいきなり銃撃された。2人は周囲に手を振っていたという。

 水路は途中まで西ベルリン領だが、東に行くにつれ東西両国領、東ドイツ領へと変わる。地上には国境を示す壁があったが、水路に国境線はなかった。

 先日、カヌーを借りて妻と2人の娘と例の水路へこぎ出した。雷雨が去った午後の空は晴れわたり、大小さまざまな船に乗る多くのドイツ人カップルが盛んに手を振ってきた。

 今はいきなり銃口を向けられることもない。50年の歳月は、夏の水辺を心から楽しめる空間へと様変わりさせた。 (垣見洋樹)

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