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ソウル 北の経験未来へ語る

2016年10月20日

 「自分が北朝鮮で体験したつらさを、韓国内や国際社会に知らせたいんです」

 北朝鮮向けのラジオ放送などに取り組む韓国の民間団体「国民統一放送」が、7月から2カ月間催した統一問題専門のジャーナリスト養成講座。脱北者のキム・ピルジュさん(30)は、参加した動機を力強く語った。

 北朝鮮では、母方の祖父が韓国南部出身というだけで、差別を受けた。食糧難で「コッチェビ」と呼ばれる浮浪児となり、目が覚めると隣で友人が冷たくなっていたこともあった。「飢えて死ぬのは嫌だ」と2006年に母親と一緒に、豆満江(トマンガン)(中国名、図們江)を渡って中国に逃げた。

 講座には約30人が参加し、半分を脱北者が占めた。同放送は傘下に、北朝鮮問題を報道する「デイリーNK」を持つ。最終日、李光白(イクァンベク)代表は「10~20年後には、朝鮮半島は驚くほど変化する。それに備えるために、みなさんのように関心を持つ人が必要だ」と呼び掛けた。

 「北朝鮮では人権を蹂躙(じゅうりん)され、夢がなかった。残っている住民を助け、南北統一に寄与したい」。キムさんが真っすぐ、前を見つめた。 (島崎諭生)