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中国・武漢 夕涼みの 変わる意味

2016年10月24日

 高温多湿で「中国三大かまど」の1つに数えられる湖北省の省都・武漢。真夏の昼は40度近くに達し、風も少ない。街全体がまさにサウナのようだ。

 夕方になると住民たちが折り畳みのいすを持ち出し、路上に並べ始めた。横になって居眠りしたり、ご近所同士でおしゃべりしたり、道路がまるでビーチのような光景。「納涼(ナーリャン)」と呼ぶ夕涼みの習慣だ。

 年配の男性は路上でも、堂々と上半身裸。武漢は地方都市といえど人口は1000万人を超える。東京のオフィス街のような高層ビルが立ち並ぶ前で、半ズボン一丁のオジサンたちが将棋を指す姿は、なかなか不思議なものがある。

 「昔は夜も道路で寝たもんだよ」とタクシー運転手。室内が狭く暑いため生まれた習慣だが、実は今では自宅にエアコンがある人も多いという。経済成長著しい中国で、庶民の生活水準も上がった。冷房が苦手なお年寄りや、昔からの習慣が好きな人があえて路上で「納涼」をしているという。

 いわば、豊かさとゆとりの象徴か。昔と変わらぬ光景でも、意味合いは移り変わっている。 (平岩勇司)