2016年11月10日

　イタリア中部地震で大きな被害を受けたアマトリーチェ。パスタの「アマトリチャーナ」の発祥地として有名な町だ。地震の報に触れた時、ピンとこなかったが、パスタの名には聞き覚えがあった。

　アマトリチャーナはローマとその周辺地域の伝統料理。トマトをベースに、グアンチャーレ（豚頬肉の塩漬け）やタマネギなどを加えたソースにパスタをからめ、地域特産チーズのペコリーノ・ロマーノをかけて食す。アマトリーチェで生まれ、１００キロ余り離れたローマで人気を博すようになったという。

　１５、１６世紀の建物が軒を連ね、中世のたたずまいを今に残す街並みも住民の自慢で、夏の避暑地として人気があった。地震が襲った週末には、アマトリチャーナの５０回目の祭典が開かれる予定で、多くの観光客がこの山あいの美しい町に詰め掛けていた。

　地震は、そんな町の「宝物」を一瞬で奪い去った。「みんな家族のようだった」「この町の生活は人生そのものだった」

　復興には時間がかかる。だが彼らが再び町への誇りと自信を取り戻す日がきっと来ると信じている。　（渡辺泰之）