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中国・杭州 戻って複雑 自然な姿

2016年11月07日

 街並みは整備されて美しく、中国語を話せない私に、ホテルの従業員やボランティアの対応は親切。だが、通りには人の気配がなく、自動車も走っていない。20カ国・地域(G20)首脳会合の取材で訪れた中国・杭州のメイン会場付近は、違和感をぬぐえなかった。

 一緒に取材した先輩記者によると、警備のため「人払い」したとのこと。地元住民はG20期間中は休日で、近郊の公共施設は利用無料になったらしい。飲食店もほとんど休業で、対応の徹底ぶりに恐れ入った。

 ようやく人心地がついたのは、G20が終わった後。会議場から車で30分と少し離れた観光市場を訪れたら、店は老若男女でにぎわい、時に大声が飛び交っている。妙な静けさが広がっていた中心地と比べ、人々の自然な姿を垣間見た気がしてほっとした。

 ただ、その夜、ホテルに戻ると、あれほど親切だった従業員から笑顔が消えていた。英語の通じる人もいなくなり、不安なこちらをけげんな顔で見るばかり。別の宿泊客に通訳してもらい事なきを得たが、こちらも自然な姿ということか・・・。 (上野実輝彦)