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ニューヨーク リニアは夢のまた夢

2016年11月15日

 国連総会の取材で首都ワシントンからニューヨークへ向かう際、日本の新幹線を想像して全米鉄道旅客公社(アムトラック)の特急列車に乗ったら大違いだった。座席指定はできず、ホームで並んで待とうにも、何番線かは前もって分からない。発車直前、駅の掲示板に表示されてから一斉にホームへ向かう。

 乗車券はインターネットで予約し、携帯電話に保存したQRコードを車掌に見せるだけ。ここは先進技術を取り入れていたが、車掌は電子端末でQRコードを読み取った後、一人一人の行き先を書いた紙を座席上の荷棚に差し込む旧来型の手作業を停車駅ごとに繰り返す。

 東京と名古屋の距離とほぼ同じだが、新幹線「のぞみ」より遅く、所要時間は約3時間から3時間半。この日は1時間遅れなのに、何の説明もない。隣席の米国人は「いつものことだ」と意に介さない様子だった。

 国連総会でニューヨークを訪れた安倍晋三首相は講演で、ワシントンまで40分で結ぶリニアを売り込んでいた。だが、アムトラックののどかな時の流れに身を任せたら、リニアなんて夢のまた夢と思わずにはいられなかった。 (後藤孝好)