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米ベスレヘム 今も街支える廃工場

2016年12月14日

 その廃工場を見て「工場萌(も)え」という言葉が浮かんだ。米大統領選の取材で、北東部のペンシルベニア州ベスレヘムを訪れた時のことだ。

 1861年に当地で生まれた「ベスレヘム製鉄」は、ニューヨークのロックフェラー・センターなど全米各地の建造物に鋼材を供給するなど隆盛した。街も大いに栄えたが、21世紀を迎えた2001年に廃業。自由貿易のもとで新興国との価格競争に敗れたのだった。

 廃工場は今、敷地内に遊歩道を通し、柵の向こうの製造ラインを見渡せる「廃工場見学ツアー」の場としてにぎわう。赤茶けた煙突や巨大なタンクが織りなす光景は美しい。製鉄の仕事を終えてなお、街の振興に一役買っている。工場の変わらぬひたむきさに萌えた。

 哀愁を引きずり廃工場を後にすると、隣の区画にカジノとアウトレットショップが入る新しい建物が見えた。「工場見学の後はこちらへどうぞ」と言わんばかりの風景だ。気分はすっかり冷めた。

 帰り道、ふと考えた。これも1つの拡大再生産と見るべきではなかったか。ああ、素直にカジノを楽しめば良かった。 (石川智規)

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