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中国・西江 のどかさに潜む苦悩

2016年12月12日

 中国の少数民族ミャオ族の里として知られる貴州省西江を旅行で訪れた。ミャオ族は銀細工や刺繍(ししゅう)にたけ、民族衣装の美しさでも有名。もち米、みそなどの食文化や生活習慣で日本と共通点が多く、「日本人のルーツ」ともいわれる。

 西江の村の見どころは、山の急斜面に密集する木造の家屋群。千戸に上る民家が支え合うように立ち並ぶ。どこからか、ミャオ族の竹管楽器「蘆笙(ろしょう)」の音色も聞こえてくる。村の周囲は斜面に沿って棚田が広がり、田んぼはまさに稲穂のじゅうたん。宮崎駿監督のアニメ作品のような「いつか見た懐かしい風景」に心が和んだ。

 北京に戻り、民族研究家の中国人に感動を伝えた。すると、「彼らが好んで、へき地に住んだわけじゃないけどね」とクールな答えが返ってきた。

 ミャオ族は古くは中原(中国中心部)に住んでいたが、漢族に追われ南方へ移住し、歴代王朝の圧政を受け、山あいの生活を余儀なくされたという。今の暮らしに至るまで、数々の民族の苦悩があったのだと思うと、脳裏に残る西江の「のどか」な映像が違って見えてきた。 (平岩勇司)