2017年01月11日
通りを歩けば「本」「クリーニング」「マッサージ」と漢字やカタカナの看板に出合う。初めて訪れたドイツ西部の経済都市デュッセルドルフには、文字通り日本があった。
当地には金融や機械製造など日系企業が約400社。従業員ら日本人が約6000人暮らす。
50年以上かけて培った「日本人街」は芸が細かい。そば屋では職人が手打ちを実演。パン屋では「(ドイツの硬水でなく)軟水で練り上げた」の売り言葉であんパンや焼きそばパンが並ぶ。日本語で応対可能な産婦人科医や美容室もあり、至れり尽くせりといった印象だ。
ロシアやオランダに赴任する日本人駐在員一家が美容室、マッサージ、すし屋をはしごし、日本の書籍や食材を買い込んで帰るという風景もあるという。故郷への恋しさを埋めるには最高のぜいたくかもしれない。
そんな話をドイツ人の支局スタッフに報告した。東京で7年暮らした彼女は当時、日本文化に夢中で、ドイツ料理店に駆け込むことはなかったという。
久しぶりのとろろごはんの味に、つい笑みがこぼれた自分とは、異郷へ飛び込む覚悟が違ったのだろうか。
(垣見洋樹)