2017年01月06日
芸術の秋。ローマの古代遺跡コロシアム内で一味違った展覧会が開かれた。展示されているのはオリジナル作品ではなくレプリカ(複製)3点のみ。
過激派組織「イスラム国」に破壊された古代遺産の▽イラクのニムルド(古代アッシリアの首都)の宮殿を守護する人頭有翼獣ラマッス像▽シリアの古代都市エブラの楔形(くさびがた)文字粘土板を収める文書庫跡▽東西文明の交流を象徴するシリア・パルメラのベル神殿天井(一部)-を原寸大で復元したものだ。
民間財団の援助でそれぞれフィレンツェ、ローマ、フェッラーラの企業が製作。3D印刷技術なども応用しポリエステル素材を切削加工、表面に樹脂を塗布して仕上げられ、遠目には本物としか思えない。
ユネスコ後援のこの「破壊から蘇(よみがえ)る」展、昨年8月にパルミラの世界遺産を死守して惨殺された地元の高名な考古学者ハレド・アル・アサドの遺志を継ぐもの。世界遺産とは命がけで守る価値があり、破壊から救えないなら復元してでも後世に伝えなくてはならないと教えてくれる。復元はテロに屈しないことの証しである。
(佐藤康夫)