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メキシコ・ノガレス 心も隔てる 冷酷な柵

2017年01月25日

 米西部アリゾナ州とメキシコの国境の両側に、ノガレスという同じ名前の街がある。隔てているのは高さ5メートルほどの鉄柵。次期大統領に選ばれたドナルド・トランプ氏が建設を主張している国境の壁の一部だ。

 メキシコ側ノガレスを壁沿いに歩くと、建物に肖像画を見つけた。近づくと銃弾の痕が見えた。車を洗って日銭を稼いでいた男性が「4年前に撃たれて死んだんだ」と言った。

 当時16歳だったホセ・アントニオ・エレーナ・ロドリゲスさん。メキシコから壁を乗り越えて麻薬を持ち込んだ男たちを追っていた米国の国境警備隊員に撃たれたという。

 隊員は「石を投げてきた」と説明したが、ロドリゲスさんは麻薬組織と関係なかった。遺族は「理由なく殺された」と米国に真相解明と隊員訴追を求めているが、反応はない。

 2001年9月の米中枢同時テロの後、不法移民対策として建てられた壁。過度に反応する隊員が無実のメキシコ人を射殺した事件は過去にもあった。

 壁は人々の心をささくれ立たせてしまう。鉄柵に張ってあったビラには「正義を」と書かれていた。 (北島忠輔)