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パリ ミッテラン氏の恋文

2017年02月02日

 フランスで最近、1冊の本が話題になった。「アンヌへの手紙」。今なお国民に尊敬される故ミッテラン元大統領が、愛人関係にあったアンヌ・パンジョさんへつづった書簡集だ。手紙は1962年に始まる。ミッテラン氏46歳、パンジョさんは19歳だった。

 フランスは伝統的に政治家の「公」と「私」を厳格に分ける文化だ。パンジョさんとの隠し子も長らく国民に隠された。同氏に近い関係者らには公然の秘密だったらしい。

 とはいえ近年、プライバシーに干渉しないという報道の「不文律」は変わりつつある。オランド大統領は当選後、女優との「密会」をすっぱ抜かれ、事実婚のパートナーとの関係を解消した。任期中に離婚、再婚したサルコジ氏もメディアをにぎわした。ただ、そこは「愛」に寛容なお国柄、政治家としての資質を問う声は少ない。

 さて、ミッテラン氏最後の手紙は95年9月22日付。大統領2期14年を全うし79歳で死去する3カ月余り前だ。1218通目の恋文はこう締めくくられている。「どうして君をこれ以上愛さずにいられようか」 (渡辺泰之)