2017年02月13日
「正しいと信じたことを追い求めてほしい」。米大統領選で敗れた直後、ヒラリー・クリントン氏の演説を聞いて、彼女が生まれ育った米イリノイ州パークリッジの光景を思い出した。
街路樹の生い茂る静かな住宅地。立ち並ぶ邸宅の前庭には「トランプ」の看板。保守色の強い共和党の地盤だ。
10代のころは共和党員だったクリントン氏。公民権運動などに携わった大学時代、差別撤廃や男女平等への思いを強くして民主党に転向した。高校の同級生の1人は「生まれながらの学級委員。正しいと信じたら譲らない」と振り返った。
正しいと思ったことを貫くのは難しい。むしろ、正しくあろうと努め、疲れてしまう人が大半だ。トランプ氏は「そんなことより、仕事と生活が大事だ」と訴え、その心理をとらえた。
トランプ氏の集会で取材した支持者が言った。「実現しない理想なんて真っ平だ。俺はあのガキ大将についていく」
「学級委員」と「ガキ大将」。そんな構図に持ち込まれ、信じた道を切り開くことができなかったクリントン氏の無念さが凝縮された敗戦の弁だった。 (北島忠輔)