2017年02月09日
「極右」や「移民排斥」など怖いイメージの言葉で報じられたオーストリア大統領選挙。僅差で敗れた極右候補に、かくも盛大な支持が集まった理由を尋ねてウィーンの街を歩いたが、言葉が連想させる不穏な空気はみじんもない。
豪奢(ごうしゃ)な市庁舎の前ではクリスマスマーケットの出店が軒を連ね、人々は楽しそうに闊歩(かっぽ)している。
イメージと現実の違いはどこにあるのか。名物のホットワインをすする3人組の大学生に尋ねると「ここで聞いてもダメ。田舎へ行って50代の労働者に聞いてみなよ」。
ウィーンは仕事も学ぶ場所も豊富だ。しかし、地方では「このままでは職を失う」「現状を変えてほしい」と不満を抱く住民が多いという。確かにウィーンは突出して反極右票が多く、地方は真逆の結果だった。
子連れの夫婦は「不安の種は静かに国中に広まっていた」と指摘した。「なのに政権は20年何もしてこなかった」とも。
ちょうど政権与党の本部が目と鼻の先にあった。一見して豊かな街で、彼らは「うまくいっている」と思い込み続けてきたのだろう。 (垣見洋樹)