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北京 煙たさも ありがたい

2017年02月24日

 新年を迎えて、北京最大のチベット仏教寺院である雍和宮に初詣した。信仰とは無縁の人たちとばかり考えていた中国人の参拝客が、意外に多いことには驚かされた。何でも、日本の元日に当たる春節(旧正月)には、数万人が訪れるという。

 25元(約430円)の入場料を払うと、線香の束をもらえる。火を付けた線香を両手で頭の上に掲げて、殿堂前でひざまずき、何度もひれ伏す地元の人たちの様子は、なかなか板についていた。

 若い女性の参拝客に何を祈願したのか聞いてみると、「早く結婚相手が見つかるようにお願いした」とほほ笑んだ。中年の男性は「家族みんなが健康で過ごせるように」。どの国でも神仏に祈願する内容は似たり寄ったりなのだった。

 北京市街はその日も、ご多分に漏れず、朝から濃いスモッグが立ち込めた。それでも、たくさんの人が、線香の煙を全身に浴び、今年1年の健康や家内息災を祈っていた。彼らに倣って、私も微小粒子状物質「PM2・5」のシャワーにさらされたコートの上から、霊験あらたかであろう「ありがたい」煙を重ねて浴びた。 (城内康伸)